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写真家 今泉真也先生 【KANI】円形フィルター使用レポート

December 12, 2018

 「 聖域  ~KANIフィルターと観る風景~ 」

 

 

 

 

 

12月、沖縄の重要な聖域であるふたつの土地を訪れた。訪れたといっても狭い島の中、風景はふだんの生活の延長線上にある。

ひとつは玉城(たまぐすく)グスク。沖縄でも最古のグスクといわれ、人でにぎわう首里城などとは別格の深い気配を漂わせている。グスクとは古い墓所が次第に拝所となった場所のことで、地方の有力者が住み、城壁を築いたのは後々のことである。

もうひとつの土地は浜比嘉島。橋ができるまでは船で行く場所だった。こちらも琉球の島々をひらいたアマミチューとシルミチューという女・男の祖神が夫婦ですんだ島といわれている。

 

 

今回の撮影にはKANIのHT PRO + MC CPLと、HT PRO + MC ND64、およびHT PRO + MC ND400の円形フィルター3枚を携行した。NDは濃度が無段階で変更できるバリアブル(可変)タイプである。

最初の印象は、「薄いがしっかりしている」というものだった。3万円超のものから2千円台のものまで一通り使ってきたが、安いと解像感が落ちたり、フレアが激しく出たりする。あまり厚みがあると広角でケラレが出るので、適度な薄さも必要だ。また3~4万となると品質は安定するものの、なかなかアマチュアでは手が出せないだろう。

 

 

外壁は自然の岩場からそのまま繋がっている。青空が派手になりすぎないようにCPLで調整。

(35ミリ CPL 三脚 玉城グスク)

 

 

 デイゴの大径木が参道に並ぶ。樹の中にかつての水の道が見えた。

(29ミリ CPL 三脚 玉城グスク)

 

 

 

祠のなかにスイジガイがある。魔よけの霊力(セジ)のある貝だ。

(35ミリ CPL 手持ち 玉城グスク)

 

 

【可変NDフィルター】

僕にとって風景はドキュメンタリーなので、感じた瞬間にすぐ撮りたい。そして自然環境の厳しい限界域で行動することも多いため、機材はできるかぎり小型で軽量、そして荷物の数も少ないほうがよい。NDフィルターも複数枚持つと時に撮影の妨げとなる。固定値NDの濃度の平坦性は認めつつも、明るさ調整を素早くできる可変NDは現場で非常に重宝するのだ。また角型ホルダー+ガラスフィルターでは、あちこち歩き回って撮影を繰り返す場合にどうしてもカメラの扱いに気をつかうが、カメラを上下逆にしても外れる心配のないネジ込み式の円形フィルターならば、比較的自由にカメラを振り回すことができる。

 

KANIでは可変NDは「動画用で画質がやや落ちる」と注意書きしているが、4200万画素フルサイズで撮影したRAWデータも、広角望遠ともに解像面での劣化はほとんど見られない。これは安心できる。速写性が求められるスチールの作品作りでも充分活用できると感じた。また評判通り、色のシフトが少ない。もちろん偏光ガラスを2枚重ねた可変NDなので光を絞っていくほどに濃度の平坦性は失われる。画面の隅が暗くなったり、X型に陰が出たりしてくるが、現在出回っているもののなかでも高水準にあることは感じられた。

 

 

 クワズイモの花の香りはあたたかい。たくさんの花粉がこぼれていた。

(35ミリ CPL 手持ち 玉城グスク)

 

 

修復した石積みだが往時の気配は濃厚だ。長時間露光は通常とは違う時間軸で写真を考えさせる。

(24ミリ CPL+ND64+ND400 三脚 玉城グスク)

 

 

 

ウタキ(拝所)にはクロトンの樹が多い。美しい声の持ち主マダラコオロギがその中でたたずむ。

(35ミリ CPL 手持ち 玉城グスク)

 

 

KANIのNDで感心したのは、最大値と最小値で回転が止まるようになっていること。MIN(最小値)に瞬時にセットできるので、つけっぱなしでいけるのだ。また、取り外すときにこの「止まること」が役に立ち、多少きつくネジ込んでいてもすぐに外すことができた。

今回は落下させることはなかったが、枠にはアルミでなくジュラルミンを使い、ガラス強度も通常品の3倍ほど確保したとのことで、フィールドで一番重要な「壊れないこと」をめざしているのは好感が持てる。

 

また変わった使用法として、NDを2枚重ねて調整すると、故意にケラレや周辺減光、面白い色転びを起こすことができる。もともと僕はレンズの周辺減光が好きなので、二枚重ね、時にCPLとの3枚重ねを使ってその場の空気感を描きだすことにも取り組めた。この場合も丸型フィルターなので機材の余計な操作は減らすことができ、地面に直接カメラを置いてのローアングルでもフィルター枠が邪魔になることはなかった。

NDを滝の流れを白くするためだけに使っているのはもったいない。使いようによっては自分のイメージを濃縮し、観る者の気持ちにひっかかる写真を生み出すことができる機材だと思う。

 

 クロトンの樹はさまざまな容姿を持つ。宵が近づくと植物たちが俄然語りだしてくる。

(18ミリ CPL+ND64 三脚 玉城グスク)

 

 

 

 誰もいない。いまごろ街は渋滞の渦だ。ここにもかつて人々が暮らしていた。

(18ミリ CPL+ND64 手持ち 玉城グスク)

 

 

ゆれるサトウキビ畑のむこうに海の光が明滅している。今日は畑人はいない。

(150ミリ CPL+ND400 三脚 玉城グスク付近)

 

 

 

【CPLフィルター】

雨風の中に好んで身をおく僕の場合、カメラは限りなく自分の手足になる必要がある。機材を気にかけているあいだに風景は刻々と変わっていくし、生きものは移動していってしまう。だから機材はなるべくシンプルがいい。とにかく現実を見る時間がほしいのだ。その場にいて、その場を見る。そのことを最優先するので、フィルターには撮影を邪魔しない操作性が求められる。

周知の通り、風景写真ではPL(偏光)は反射を取り除き、色を出したり、水の中のものを見せるために使われる。そしてもうひとつ僕好みなのが、色を抜く使い方である。雨に濡れた被写体では、色そのものよりもその場の空気を見たいことがあるので、PLを使い色を少し抜いてイメージに近い質感にすることも多い。気をつけるべきは、この調整にはマニュアルはなく、自分の感じたものを機材に反映させるということだ。それが写真を撮る者の個性でもあり、楽しみともなると思う。

 

 

小タコ獲り。貝をつけた糸を投げて引き寄せる。「今年は水温が高くてあまりいない」と言っていた。

(120ミリ CPL 手持ち 浜比嘉島)