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Vivid CPL、Premium CPL、フィルター無しでの比較

KANIのCPL(Circular Polarized Light:円偏光)フィルターは「Premium CPL」と「ViVid CPL」の2種類があります。  

Premium CPLは、光量低下が少ない高透過偏光膜を採用したC-PLフィルターで、超広角ズームや大口径レンズでもフィルター装着による四隅のケラレが出ないよう、フィルター枠の厚みを6mmまで薄くしているのが特徴です。また、フィルター面には、帯電防止、撥水、防汚コーティングが施されているので、撮影中に小さな水滴やホコリが付着しても、ブロアーでサッと吹くだけで、水滴やホコリをキレイに吹き飛ばすことができます。  

一方、ViVid CPLは、空の青さを強調し、植物の緑の黄色っぽさを抑え、よりクリアで鮮やかな緑に再現できるC-PLフィルターです。一般的なC-PLフィルターとは異なり、580nm付近の波長を選択的に吸収する(抑える)ことで、青空や植物の黄色みが抑えられ、記憶色に近い鮮やかでクリアな色に再現できるのが特徴です。ViVid CPLも、帯電防止、撥水、防汚コーティングが施されています。

一般的に、CPLフィルター使用で期待される効果としては、

・青空をより青くする ・水面やガラスの表面反射(テカリ)を抑える

・葉っぱなどの表面反射を抑え、被写体本来の色を強調する などがありますが、広角撮影で、画角の近くに太陽がある場合には、太陽に近い部分と太陽から離れた部分で青空の濃さが大きく違って、濃度ムラが目立ってしまうことがあります。

このようなケースでは、PLフィルターの効果を弱めに調節するか、PLフィルターを使わずに、ハーフNDフィルターで空の明るさを落とすのがお薦めです。また、葉っぱの反射を完全に抑えてしまうと、立体感やキラメキ感がなくなってしまうので、適度に表面反射を残すことも意識すると良いでしょう。  

ちなみに、一眼レフでは、PLフィルターで青空の明るさが暗くなるのを光学ファインダーでダイレクトに感じることができますが、ミラーレスカメラのライブビュー表示は、PLフィルターで空の明るさが落ちても、適切な明るさに自動調整されてしまうので、どのポイントで空がもっとも暗く落ちるのかわかりづらいことがあります。このような場合には、AEロックボタンを押して、露出を一時的に固定した状態でPLフィルターの前枠を回すと、 PLフィルターによる空の明るさの変化がわかりやすくなります。  

ところで、CPLフィルター装着で色味が変化しないのが理想ですが、Premium CPLはわずかにアンバーが強く(色温度が低くなる)、ViVid CPLは青みが強い(色温度が高くなる)特性です。

ホワイトバランス[オート]の場合は、フィルターの色味の差は小さくなりますが、ホワイトバランスを[太陽光]に設定するなど、手動でホワイトバランスを固定して撮影する場合には、ホワイトバランス微調整機能を使って、Premium CPLはブルー寄りに、ViVid CPLはアンバー寄りに補正すると、ノーフィルターで撮影した写真との色味の差を小さくできます。

<検証>  

Premium CPLとViVid CPLで写りがどのように変わるのかをチェックしてみましょう。まず、セコニックの分光方式カラーメーター スペクトロマスターC-800で、2つのCPLフィルターの分光特性を簡易的に測定してみました。セコニックC-800は、自然光を始め、ストロボやLED、蛍光灯、白熱電球などの色温度を測定し、適切なカラーバランス(ホワイトバランス)で撮影するためのフィルター数値やホワイトバランス設定値を示したり、演色評価数による光源の色再現性を確認できるカラーメーターです。工業用の検査機器ではないので、あくまで簡易的な測定に過ぎませんが、それでもCPLフィルターやNDフィルターの色味や透過率をある程度調べられます。  

安定した標準光源は用意できないので、晴天屋外の太陽光を標準光源として測定し、それに対して、CPLフィルターを装着すると、どのように分光特性(スペクトル)や色温度、照度(Lux)が変化するかを比較してみました。C-800の受光部は乳白色の半円球なので、側面からの光を拾わないよう、受光部を黒い円筒で覆い、円筒の上にCPLフィルターを設置して、スペクトルや照度の変化を測定しています。

フィルターを装着せずに太陽光の特性を測定しました。色温度(CCT)は5566K。夏のデーライトとして理想的な色温度です。照度は106000lx。Ra(平均演色評価数)というのは、自然光照明で再現される色をどれだけ再現できているかを示す指標で、Ra100がもっとも理想的な自然光照明ということです。Ra99.3なので、ほぼ理想的な光源ということがいえます(晴天屋外の太陽光なので当たり前ですね)。  ここで測定した太陽光の色温度が5566Kということで、WB(ホワイトバランス)補正の基準色温度を5500Kに設定しました。当然、WB補正画面では補正値はほぼ0を示しています。

C-800の受光部にPremium CPLフィルターを設置して分光特性を測ってみました。色温度は5566Kから5279Kと少しだけ下がっています(アンバーが強くなっています)が、スペクトルの形はほとんど同じです。照度は106000lxから47600lxと約1段ちょっと光量が低下しています。WB補正画面を見ると、補正値はブルー方向に+2、M方向に+1と表示されており、フィルターがない状態に比べ、わずかにアンバーとグリーンが浮くようです。  ホワイトバランス[オート]で撮影する場合、カメラの機種によってはわずかな色味の違いが補正されることもありますが、実際に使ってみた感触ではノーフィルターよりもやはりアンバーが浮いて、青空や緑が濁ってしまうケースもそれなりに多いように思います。撮影結果を見て、必要に応じてホワイトバランス微調整でブルー+マゼンタ方向に補正すると、撮って出しJPEGでも好結果が得られるはずです。

C-800の受光部にViVid CPLフィルターを設置して分光特性を測ってみました。フィルターなしやPremium CPLフィルターのスペクトラムとは大きく異なり、ViVid CPLのスペクトラムは約580nm付近の大きく減衰しています。つまり、山吹色付近のイエロー成分を大きく抑え、740nm付近の近赤外領域も吸収することで、植物の葉っぱの黄色みを除去し、くすみのない鮮やかな緑に再現することを狙っています。  

最近のカメラは、赤外線カットをしっかり行っているので、近赤外域カットの効果はそれほど顕著に出ない可能性もありますが、カバーガラスが薄く、赤外カットが弱めで、葉っぱが茶色っぽく写りやすい機種ではViVid CPLフィルターを装着することで、植物の緑色の濁りが低減する可能性もありそうです。  ただ、黄色を吸収することで、色温度は6852Kと曇りの色温度とほぼ同じになっています。実際の撮影でもViVid CPLフィルターで撮影した写真は、青空や緑がクリアに再現されていますが、ホワイトバランスも少し青みが強くなっています。WB補正画面を見ると、大きくアンバー補正とわずかにグリーン補正が指示されています。

実際にはアンバー補正はこの半分程度で自然な色合いに見えるので、ホワイトバランス微調整でアンバー方向に+4、グリーン方向に+1程度補正すると、青みが強すぎず、それでいて、青空の青や植物の緑の濁りが少ないクリアな発色が得られます。  夏場は太陽の高度が高く、日中晴天の色温度も高めで、植物の緑もまだまだ鮮やかな季節では、ViVid CPLを使うと緑が少し鮮やかになりすぎる傾向があります。しかし、秋から冬にかけて太陽の高度が下がり、日中晴天でも色温度があまり高くならず、残った常緑樹の緑も少し茶色っぽくなる季節には、ViVid CPLフィルターの青みの強さと、緑からイエロー成分を抑える特性で、植物の緑がくすまず、記憶色に近い鮮やかな発色が得られることが期待できそうです。

<比較作例>

(1)山中湖花の都公園のひまわり

KANI Premium CPL

Vivid CPL

No filter

すべてホワイトバランス[オート]で撮影。フィルターなしで撮影した写真と比べ、Premium CPLやViVid CPLを使って撮影した写真は空の明るさが抑えられ、青空の濃さが強調されている。Premium CPLは少し渋さを残す深みのある青空に再現され、ひまわりの葉っぱは少し黄色みが強くなっているが、ViVid CPLは濁りのないクリアな青空で、ひまわりの葉っぱも実際よりも深みのある緑に再現されている。どちらの描写が良い・悪いではなく、好みの問題だ。

(2)初台の国立劇場前から新宿方面を臨む

Premium CPL

Vivid CPL

No filter

すべてホワイトバランス[オート]で撮影。フィルターの色味がそのまま反映され、Premium CPLはわずかにアンバーが強く、ViVid CPLはブルーが強く再現されている。ビルの壁などを見ると、ViVid CPLは明らかに青みが強いものの、晴天日陰で青かぶりしていると考えればさほど不自然な色調ではなく、芝や常緑樹の緑も実際よりも黄色みが少ないが、記憶色的には濁りがなく、みずみずしい緑に再現されているといえる。個人的には、ViVid CPLに少しアンバー補正をかけて撮影したいところだが、青空の青と植物の緑をクリアに再現したいときに効果絶大だ。

(3)神代植物公園の蓮

Premium CPL

Vivid CPL

No filter

ホワイトバランスを[太陽光]に設定し、ライブビューを見ながら必要に応じてWB微調整を行って撮影。フィルターなしとViVid CPLはブルー方向に+0.5、Premium CPLはブルー方向に+2の補正を行っている。Premium CPLとViVid CPLで撮影した写真は、CPLフィルターの偏光効果で水面と葉っぱの表面反射が適度に抑えられ、葉っぱの緑がより濃く再現されているが、ViVid CPLのほうが葉っぱの緑の黄色みが少なく、実際よりもクリアな緑色に再現されている。蓮のマゼンタの花も黄色みが抜けることで、ViVid CPLのほうがより鮮やかで印象的に再現されている。

(4)山中湖花の都公園のキバナコスモスと青空

Premium CPL(AWB)

Premium CPL(DAYLIGHT)

Vivid CPL(AWB)

Vivid CPL(DAYLIGHT)

No filter (AWB)

No filter (DAYLIGHT)

ホワイトバランスを[オート]と[太陽光]で撮り比べ。フィルターなし、Premium CPL、ViVid CPLのいずれも、ホワイトバランス[オート]と[太陽光]で、多少色味が変化しているが、基本的にはセコニックC-800で簡易測定したフィルターの色味が反映されている。RAW現像等でシビアにグレーバランスを整えれば、Premium CPLとViVid CPLの色の差は小さくなるが、青空や植物の緑などはViVid CPLのほうが黄色成分が抜け、(忠実な発色ではないものの)濁りの少ないクリアな発色が得られるのが特徴だ。

<作例>

山中湖花の都公園のひまわり。残念ながら富士山は雲に隠れてしまったものの、むしろ青空に白い雲、そして、眩しいばかりのひまわりのイエローの色彩コントラストをさらに強調するため、ViVid CPLフィルターを装着して撮影。ひまわりの葉っぱの本来の色は、もう少し茶色っぽいが、ViVid CPLフィルターの効果で葉っぱの緑から黄色みが抜け、くすみのない緑色に仕上がっている。正しい色ではないものの、濁りのない緑とコバルトブルーの濃い青空は、ボクの記憶色的には好ましい発色といえる。

長引く梅雨のなか、数週間ぶりに澄み渡った青空に恵まれた貴重な晴れ間。ちょうどデジタルカメラマガジン2020年8月号の発売日で、EOS R5で撮影したルーク・オザワさんの写真を見た直後、ViVid CPLの作例を撮影するため新宿に。そこで、上空を通過するヒコーキを見て、ちょっと真似してみた(笑)のがこの写真。ルーク・オザワさんの写真に比べると、攻めが足りないというか迫力不足の感は否めないが、青空の青とヒコーキの白い機体がViVid CPLで強調され、青空に対してはわずかにアンダー気味の露出となったことで、非常に深みのある青空に再現されている。

京浜島から羽田空港に着陸するヒコーキを狙う。湿度の高い東京の夏空で、しかも地平線に近い白っぽい霞んだ空なので、少しでも空の青みが出ないかとViVid CPLフィルターを使用。太陽の位置は真後ろのド順光なので、劇的に青空を青くすることはできなかったが、それでも多少は空の明るさが落ち、青みも出たので、ヒコーキの白い機体とうまく分離できている。

京浜島緑道公園から、羽田空港A滑走路への着陸機を真下から狙ってみた。本当はもう少し日が傾いてからのほうが機体の下の方にも光が当たってよかったが、残念ながらこの日は夕方西の方に雲が湧いて日が陰ってしまったので、このアングルからはこれがこの日のベストショット。機体が少しでも明るく写るように、ViVid CPLフィルターで空の明るさを落としてみた。

同じく京浜島緑道公園からB滑走路からの離陸機を狙う。8月下旬の17時頃ということもあり、色温度も少し低めになってきた頃合いだが、ViVid CPLフィルターは少し青みが強いので、太陽の高度が低めの4600〜4800K前後の色温度では、中途半端なアンバーっぽさが抑えられ、クリアな色調で写せるのが特徴。もちろん、CPLフィルターの偏光効果で、地表付近の白っぽい空も青く写すことができ、離陸する機体を強調することができた。

☆KANI CPLラインナップ

https://www.loca.design/circle-filter-cpl-series

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